法的に物を考える

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不動産が「物」(商法521条)に該当するとした最高裁判決

表題の内容の判決が出ました。*1

 

1 事案

XはYに対し本件土地を賃貸して引き渡した。同賃貸借契約は終了したが,同契約終了前から,YはXに対し,弁済期にある運送委託料債権を取得していた。Xは,Yに対し所有権に基づき本件土地の明け渡しを請求したが,Yは,商法521条により,上記債権を被担保債権とする商事留置権が成立するとして明渡しを拒否した。

2 争点

本件土地は商法521条に定める「物」に該当するか。

3 判示

民法及び商法の文言上,不動産が商法521条に定める「物」に該当しないと解すべき事情は存在しない。

また,商法521条の趣旨は,商人間における信用取引の維持と安全を図る目的で特別の留置権を認めたものであり,不動産を対象とする商人間取引が広く行われている実情からすると,不動産が同条の目的物となりうることは,上記趣旨にかなう。

以上によれば,不動産は,商法521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たると解するのが相当である。

4 意義・射程

従前,建築業者の敷地に対する商法521条の適用に関して,積極説と消極説に分かれていました。今回の判例は,不動産が商法521条の「物」にあたると判示していますが,その理由付けは抽象度が高く,ゆえにその射程は広いと考えられます。したがって,最高裁は,上記の争いについて積極説を採ったものと考えます。

もっとも,建物請負業者がその敷地を「占有」(商法521条)しているといえるかは別の問題であり,この点についてはさらなる検討が待たれるところとなります。

*1:最高裁平成29年12月14日第一小法廷判決